第4回藤原ナチュラルヒストリー財団フォトコンテスト・受賞者のコメント 2013.03.11
今回で第4回となる藤原ナチュラルヒストリー振興財団フォトコンテストは、2012年11月30日の締め切りまでに、43点の応募をいただきました。 昨年度よりも応募点数は減少しましたが、応募された各作品のレベルは高く、どの作品を選ぶのかに苦労しました。厳正な審査の結果、以下の様に最優秀賞1点、優秀賞2点、佳作3点を決定しました。
最優秀賞に選ばれた「進化の通路」は、シダ植物の葉脈に焦点を当て、美しく描きだした作品です。これまで3回のフォトコンテストでの最優秀賞は動物が主題の作品でしたが今回ははじめて植物が主題の作品が選ばれました。優秀賞の2作品も最優秀賞に勝るとも劣らない力作でした。「翅脈」は暗闇に羽化したての蝉の翅が浮かび上がる作品です。また、「海中を漂う小さな宝石」はプランクトンの美しさを捕らえた作品です。この2点は黒を背景に対象を浮かび上がらせたものであり、他にも似たような作品があったので残念ながら優秀賞とさせていただきました。
今回の応募作品は、自然の美しさや楽しさ、厳しさといった自然史のもつ特性を描いた作品が多くあったのが特徴でした。佳作に選ばれた3点はまさにこのような特徴を表した作品です。本フォトコンテストの趣旨であるこのような作品が次回も数多く集まるのを期待しています。
最優秀賞
「進化の通路」(No.22|Diego Tavares Vasques)
シダ植物のウラボシ科の仲間、Microgramma squamulosaは非常に面白い植物です。私の通っていたブラジルのサンパウロ大学の近辺では普通の植物なのですが、いつも興味を惹かれていました。そして、葉っぱの両面に奇麗な柄の模様が付く事を発見しました。どんな進化過程からそんな模様が出て来たのかな?
優秀賞
「翅脈」(No.35|中島 保寿)
東京大学本郷キャンパスにある三四郎池のほとり、蝉の声が騒がしい夏の夕暮れに、羽化したてのミンミンゼミを見つけました。LEDの懐中電灯が浮かび上がらせたのは、翅いっぱいに命のもとが行きとどいていく様子でした。
「海中を漂う小さな宝石」古賀 皓之(No.38|)
棘皮動物の仲間スナクモヒトデの幼生は、生まれてから2週間ほど海中を漂います。わずか1ミリほどの透明なからだの中には、美しい針状の骨片が一対。この精緻な骨片は炭酸カルシウムの単結晶でできており、光によって虹色に輝きます。
佳作
「4点倒立!」(No.15|真下 雄太)
体温を調整するために太陽光に当たる面積を小さくしようとしてオベリスク姿勢をとっています。夏の暑い時期によくみられる、素敵な風物詩のひとつです。
「夏色」(No.29|中川 雅三)
こんなに派手なコントラストも、夏の陽射しの中では保護色としてはたらくのでしょうか。あるいは、小さな命にも自らの美しさを誇る気持ちがあるのかもしれません。国立科学博物館附属自然教育園にて
「脈動する木々」(No.41|細川 健太郎)
オーストラリア・クイーンズランド州に広がる世界最古の熱帯雨林。4億年の歴史が育んだ豊かな森は、圧倒されるほどの生命に満ちあふれていました。もつれあいながら樹冠へと伸びていく木の幹が森そのものの脈打つ血管のように感じられ、写真に切り取った一枚です。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。