第8回ナチュラルヒストリーフォトコンテスト結果発表および受賞作品・コメント 2017.01.31
第8回ナチュラルヒストリーフォトコンテストの審査結果を発表します。
以下は審査委員長からの講評、受賞作品および受賞者のコメントになります。
講評
公益財団法人藤原ナチュラルヒストリー振興財団では、平成28年度第8回ナチュラルヒストリーフォトコンテストを行った。今年度のテーマも昨年度に引き続き「身近な自然史」とし、応募期間は平成28年10月1日~11月30日、応募方法はメール添付とした。
募集方法としては、財団HPへの掲載、インターネットのコンテスト情報掲載サイト(登竜門並びにフォトコンめぐり)へ登録した。
本年度の応募作品は、85作品であり、昨年度より応募数が増加したのみならず、優れた作品が多くなったように思われた。
一次審査として、理事、評議員、監事等が応募作品から5作品を選び、さらに最も良い作品を1つ選んで投票を行った。選ばれた作品をそれぞれ1点とし、最も良い作品はさらに1点を加算する事とした。集計の結果、2得点以上を得た作品を一次審査通過作品とし、21作品が選ばれた。
二次審査は、理事、評議員、監事等が一次審査通過作品の中から3作品を選び、その中からさらに最も良い作品を1つ選んで投票を行った。一次審査と同様に、選ばれた作品はそれぞれ1点とし、最も良い作品はさらに1点を加算して集計した。その結果、13点を得た「62. マウスクリニック」が最優秀作品に、8得点の「49. 頑張れBaby!」および7得点の「61. 彼岸花 雨」が優秀賞作品に選ばれた。また、3得点以上を得た7作品を佳作とした。
最優秀賞の「マウスクリニック」は、ハタの口の中の海老を捉えたユーモラスな作品で、生き物の間の関係を鮮やかに描き出したものである。優秀賞の2作品もそれぞれ自然の中の情景を的確に切り取った作品である。本フォトコンテストの趣旨が浸透してきたためか、佳作を含めて自然史をうまく表現した作品が多くなったように感じた。
一次審査通過作品(この内、*マークのあるものが佳作作品)
「1.伊豆沼ビックバン」*、「2.深海の踊り子」、「10.木漏れ日」*、 「15.眼に映るもの全ては桜」、「17.命を育む種の寝床」、「19.ゆるやかな紅葉」、 「22.悠久の森」*、「24.オー元気!」*、「25.蓮の花に魅せられて」、 「27. これぞ種子力」、「35.飛翔」*、「36.UFOあらわる」、「39. 奇岩」、 「40.ホオズキカメムシの卵を見つけた蟻」、「42.大地の裂け目から天を仰ぐ」*、 「43. 目覚め」、「49.頑張れ Baby!」、「56.夜露を纏う(よつゆをまとう)」*、「61.彼岸花 雨」、「62.マウスクリニック」、「72.輝く芽生え」【最優秀賞】
「マウスクリニック」 (No.62 | 谷口 たけ子)
エビはハタの体に付いた寄生虫や口の中の汚れを時々掃除をします。この日ハタがエビに近寄るとエビがハタの頭の上に乗りました。するとハタは大きく口を開け頭上のエビに口の中を掃除するように促したのです。エビは躊躇せず大きな口の奥まで入り懸命に掃除をしています。私はこの共生関係に感銘を受けました。
【優秀賞】
「頑張れBaby!」 (No.49 | 若林 克己)
信州の山小屋にある小さな池では4月にヤマアカガエルの産卵、ゴールデンウイーク頃にはアズマヒキガエルが蛙合戦を展開し、梅雨明けには二ホンアマガエルが産卵します。この写真は変態を完了したばかりのアマガエルの坊やが、私に驚いて野生のミツバの穂先に飛び移り、懸命にこらえている可愛らしい場面です。
「彼岸花 雨」(No.61 | 大田 慶)
あなたが彼岸花と呼ばれている事を不思議に思う。なぜって、あなたはまるで血が通っているように真っ赤に、生を主張しているのだから。あなたは消えない火のように、雨に濡れてもそのままだ。あなたは生きているんだな。それがこんなに、美しい。
【佳作】
「伊豆沼ビッグバン」 (No.1 | 森井 悠太)
宮城県北部の伊豆沼にて、眠りから覚めたマガンの大群。湖面からもくもくと沸き上がり、あれよあれよと空を埋め尽くし、次から次へと頭上を通過するまで、ほんの1分間ほどの出来事だったかもしれない。しかし、これほどまでに感動的で濃密な1分間をこれまでに体感したことがあっただろうか。まさに夢のようなひとときを過ごした。
「木漏れ日」 (No.10 | 西村 拓真)
「奇跡の海」と呼ばれるインドネシアの秘境ラジャアンパット。豊かな海には豊かな森がある。マングローブからの木漏れ日が見事にダイバーをショウアップした。
「悠久の森」 (No.22 | 小和泉 春男)
秋の気配を感じる頃、京都の西山一帯では、色々なキノコが見られます。キノコは地球上に於ける生物、植物や動物の死骸を分解し、また木の根とキノコの地中の菌糸は土の中で複雑な共生関係を築き双方が栄えるように協力しています。その森の主役と未来永劫に渡って子孫に残すべき美しい森をカメラに収めました。
「オー元気!」 (No.24 | 森田 次郎)
ここタイにはサルが住み着く祠が何ヶ所かある。祠が先にありサルが住み着いたのか、それともサルが住んでいた森に祠ができて森が少なくなりサルが餌を求めて祠に住むようになったのか。ロッブリーはサルの町として有名でロッブリー駅のそばにある祠にはおそらく500匹近くのサルが住み着いていると言われている。このロッブリーの祠の伝説ではサルが住み着く森があり祠ができたと語っている。おそらく森が少なくなるにつれて祠のお供え物である果物のお下がりをもらうサルが住み着き住民はサルを崇め餌をやり始めたという気がする。タイの祠に住む主なサルはカニクイザルである。
「飛翔」 (No.35 | 米倉 祐依)
(コメントなし)
「大地の裂け目から天を仰ぐ」 (No.42 | 西澤 政芳)
この七条大滝は支笏湖の少し西側にあり、林道を30分ちょっと歩けばたどり着けます。氷点下10度以下でしたが、寒さは感じませんでした。前回の冬は計3回行きましたが、3回目にしてやっと目的の氷柱と星空を撮ることができました。いずれも積雪が少なかったので、スノーシュー等は不要で助かりました。
「夜露を纏う(よつゆをまとう)」 (No.56 | 湖山 昌男)
よく出かける公園の一角にオタフクナンテンが植えてあります。秋から冬にかけて、紅葉したオタフクナンテンはとても奇麗です。晩秋の時期は朝早く行くと、写真のように夜露がとても小さな水玉になります。冬は凍った霜が葉を縁取ります。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。