第9回ナチュラルヒストリーフォトコンテスト結果発表および受賞作品・コメント 2018.01.31
第9回ナチュラルヒストリーフォトコンテストの審査結果を発表します。
以下は審査委員長からの講評、受賞作品および受賞者のコメントになります。
講評
公益財団法人藤原ナチュラルヒストリー振興財団では、平成29年度第9回ナチュラルヒストリーフォトコンテストを行った。今年度のテーマも引き続き「身近な自然史」とし、応募期間は平成29年10月1日~11月30日、応募方法はメール添付とした。
募集方法としては、財団HPへの掲載、インターネットのコンテスト情報掲載サイト(登竜門)へ登録した。
本年度は総計で134作品の応募があった。昨年度は85件、一昨年度は59件であったので、本フォトコンテストの一般的な認知は進んでいると思われる。
一次審査として、財団役員等が応募作品から5作品を選び、さらに最も良い作品を1つ選んで投票を行った。選ばれた作品をそれぞれ1点とし、最も良い作品はさらに1点を加算する事とした。集計の結果、4得点以上を得た作品を一次審査通過作品とし、11作品が選ばれた。
二次審査は、財団役員等が一次審査通過作品の中から3作品を選び、その中からさらに最も良い作品を1つ選んで投票を行った。一次審査と同様に、選ばれた作品はそれぞれ1点とし、最も良い作品はさらに1点を加算して集計した。その結果、11点を得た「No.51. 虹色のおうち」が最優秀作品に、10得点の「No.4. 実らなさそうな恋」および9得点の「No.102. 朝露」が優秀賞作品に選ばれた。また、2次審査対象作品の8作品全てを佳作とした。
最優秀賞の「虹色のおうち」は、蜘蛛の巣が作った光の回析を捉えた幻想的な作品であり、一瞬の光条件をうまく生かした作品である。優秀賞の2点、「実らなさそうな恋」およと「朝露」も自然界の中の一瞬をうまく捉えた作品であり、最優秀賞とは僅差の評価であった。他の作品も含めて、今回の応募作品では、自然に対して個性的に描写した作品が多く見られた。
一次審査通過作品
「4.実らなさそうな恋」「19.アメンボの捕食」「24.カワセミのダイビング」「45.春のご馳走」「48.怖いお荷物」「51.虹色のおうち」「65.☆体長5mmの目力...☆」、「89.白一点」「102.朝露」「110. 雪のひとひら」「134.兄妹」
【最優秀賞】
「虹色のおうち」 (No.51 | 仲程 梨枝子)
市内の公園に蜘蛛の巣の撮影に出かけました。その時の一枚です。午前中の蜘蛛の巣は、まだ痛んでなくて綺麗でした。ちょうど朝の斜めの光が差してきました。蜘蛛の糸が色とりどりに輝き、まるで虹で造った家のようです。自然の織りなす美しさに見とれながらシャッターをきりました。
【優秀賞】
「実らなさそうな恋」 (No.4 | 福家 悠介)
婚姻色の美しいトノサマガエルのオスに捕らえられたモリアオガエルのメスをとらえた一枚。異種との抱接は双方に得のない行為だが、オスの無垢な瞳に罪の意識はなさそうだ。メスは勘違いさんを離す術をもたないのだろう。モリアオガエルのメスは背中に大きな荷物を背負ったまま森の中に消えていった。
「朝露」(No.102 | 千葉 洋)
晩秋の朝、風雨を避けていたトンボについた朝露。とても重そうで体重が倍以上になってるんじゃないかな。そこへ弱い朝日がそっと射し込んだ、その美しさに驚愕。シャッターの度に色の変化を楽しんだ。
【佳作】
「アメンボの捕食」 (No.19 | 上杉 裕昭)
普通なら見過ごしてしまいそうなアメンボの生態。せせらぎにアメンボがたくさんいて、表面張力で膨らんだ水面が光っていました。よく見ると小さな昆虫を捕まえていました。アメンボは積極的に餌を捕まえるという行動はしなくて、水面に虫などの餌が落ちるのを待ち、そして捕獲して体液を吸うことのようです。とても珍しい場面に出会えました。
「カワセミのダイビング」 (No.24 | 鈴木 寿男)
写真歴は数十年ありますが、主に風景を撮ってまいりました。鳥の写真はここ3年程度の経験です。数ある鳥の中でカワセミの色の美しさ、俊敏さに惹かれました。この写真は葛西臨海公園の小さな池で撮りましたが、小さな岩から餌を求めてダイビングする瞬間をスピード感を持って撮れたと思います。
「春のご馳走」 (No.45 | 野辺 佳子)
春の桜が舞う雨の日。今年も可愛いカモたちの旅立ちの日がやってきました。そろそろ、北の国へ出発です。いい香りの桜の花に囲まれて、カモ達は遊んだり、眠ったり、食事をしたりしていました。桜の花が美味しいことを知ってるかのようにピンクの桜の花をたくさん啄んでいました。
大きな海を渡れますように...
そして、来年、新しい家族と一緒にここで再会できますように....
「怖いお荷物」 (No.48 | 若林 克己)
鈴なりになった卵塊と言う怖いお荷物を背負わされてしまったアケビコノハの幼虫です。天敵としては、ヒメコバチ科のアケビコノハヒメコバチの名が挙げられています。寄生蜂は産卵の際に幼虫の脱皮を止める物質も注入するのだそうです。やがてこの卵塊から一斉に ヒメコバチの幼虫がハッチングしてこの仔の生命力を吸い上げてしまうことは自然の理とは言え、哀れです。
「☆体長5mmの目力...☆」 (No.65 | 青木 孝)
紫陽花が咲く頃 その葉をちょこまかと動き回る 沢山のマダラアシナガバエに出会える カメラのファインダー越しに見ているとあきらかに違う何かが 目の前を横切った... いったい何だろう~? 探しても 目の前には彼らしかいない... ふと...真横を見ると そこに 仁王立ちして わたしを凝視している 写真の個体がそこにいた! 毎年紫陽花が咲くと その美し過ぎる
そして力強い目力に衝撃を受けた記憶が よみがえってくる。
「白一点」 (No.89 | 松林 宏)
紅葉を求めて植物園に行くとアオサギが真っ赤に色付いた木の上に止まっていました。珍しい取り合わせをカメラに収めようと周囲を歩き回ります。丁度、紅葉の赤いトンネルの先にサギ収まる構図を見つけシャッターを押しました。アオサギですが胸部は白く輝き、紅一点ならぬ白一点の絵となりました。
「雪のひとひら」 (No.110 | たなか ゆみ)
湿度と温度によって形も大きさも変わってくる雪の結晶。私の住む町には滅多に雪が降らず、降ったとしても湿度が高く結晶の形をしたまま降る事は少ない。この年は珍しく結晶の形をしたまま地上に辿り着いた。積もった雪にカメラを向けて見えたその小さな雪のひとひらに施されたデザインはとても繊細でどれも美しかった。
「兄妹」 (No.134 | 小岩 史子)
夏の夕暮れ前、急に降り出した雨の中。お気に入りのミズナラの木の中で体を寄せ合って、雨宿りするフクロウの雛たち。彼らの性別はもちろん分かりませんが、少し体の大きい兄(右)が妹(左)をかばっているようにも見える微笑ましい姿でした。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。