第11回ナチュラルヒストリーフォトコンテスト結果発表および受賞作品・コメント 2020.01.31
第11回ナチュラルヒストリーフォトコンテストの審査結果を発表します。
以下は審査経過、審査委員長からの講評、受賞作品および受賞者のコメントになります。
審査経過
公益財団法人藤原ナチュラルヒストリー振興財団では、2019年度第11回ナチュラルヒストリーフォトコンテストを行った。今年度のテーマも引き続き「身近な自然史」とし、応募期間は2019年10月1日~11月30日、応募方法はメール添付とした。
募集方法としては、財団HPへの掲載、インターネットのコンテスト情報掲載サイト(登竜門)へ登録した。
総計で105作品の応募があった。
一次審査として、財団役員等が応募作品から5作品を選び、その中から最も良い作品を1つ選んで投票を行った。選ばれた作品をそれぞれ1点とし、最も良い作品はさらに1点を加算する事とした。集計の結果、3得点以上を得た作品を一次審査通過作品とし、10作品が選ばれた。
二次審査は、財団役員等が一次審査通過作品の中から優秀とする3作品を選び、その中で最も良い作品を最優秀とし1つ選び、優秀とされた作品を2つ選び、最優秀を2点、優秀を1点として集計した。なお、優秀作品に同点が出た時のために、順位をつけて投票を行った。その結果、11点を得た「No.87. 立ち向かう」が最優秀作品に、9得点の「No.29. 一日の始まり」および8得点の「No.8. まだら岩」が優秀賞作品に選ばれた。また、全2次審査対象作品に得点が2得点以上入ったことから、最優秀賞・優秀賞を除く7作品すべてを佳作とした。
一次審査通過作品
No.8 まだら岩 / No.19 解き放たれた命 / No.29 一日の始まり / No.59 高く遠く / No.65 抜き足差し足 / No.66 カブトミジンコ / No.77 橋杭岩に昇る天の川 / No.81 ゆっくりでいいからね / No.87 立ち向かう / No.93 幻想の朝
講評
最優秀賞の「立ち向かう」は、カラスとハチの対峙の瞬間を会心のシャッターチャンスで捉えた。小さなハチの勇敢さと知恵者とされているカラスの驚きは、自然の日常でもあり、身近な自然史に相応しい作品である。
優秀賞の2点、「一日の始まり」および「まだら岩」は、いずれも美しい自然を見せてくれた作品である。長い歴史が作り出した山、空、地層、生物の自然の美がそれぞれに見事に表現されている。
今年は、応募作品のレベルが高く上記3作品以外にも素晴らしい作品が多いため、7作品を佳作として選定した。
【最優秀賞】
「立ち向かう」 (No.87 | 近藤 紀子)
日頃からカラスを撮りまくっていますが、オオスズメバチに怯むカラスは初めて見ました。大きなカラスに立ち向かうスズメバチに圧倒されつつ、ハチの怒りの巻き添えになるのではと緊張しながら撮影しました。カラスもわたしも刺されず無事に写真が撮れ、さらに賞までいただけて嬉しい限りです。今後もカラス撮影頑張ります。
※ 写真をクリックすると大きいサイズで見る事ができます。優秀賞・佳作も同様です。
【優秀賞】
「一日の始まり」 (No.29 | 尾上 八郎)
北アルプス乗鞍にて、早朝の雲海と朝焼けに染まる紅葉を撮影中にホシガラスが2羽右後方より飛来。構図を紅葉エリアから右上方向へ変更し雲海に浮かび上がる様な光景に胸躍らせながらシャッターを切りました。
「まだら岩」(No.8 | 木下 滋)
まだら岩は、和歌山県すさみ町小附地区を流れる日置川の支流・城川にあります。数千年前、砂岩と泥岩が交互に重なった地層が、地下で高温の熱水によって硬化したものです。まだら岩のあるすさみ町は、南紀熊野ジオパーク地域にも認定されています。
【佳作】
「解き放たれた命」 (No.19 | 上杉 裕昭)
田んぼのあぜ道を歩いているときに見つけました。害獣防護柵に産み付けられた卵のうから、大量の子蜘蛛が出ていました。自然淘汰により、この中から生き残るのはかなり少ないものと思われます。
「高く遠く」 (No.59 | 忽那 博史)
野鳥や哺乳類、昆虫など多くの生きものが生息する公園で、ショウリョウバッタのいきいきとした、動きのある姿を撮影出来たことは、とても幸運でした。
「抜き足差し足」 (No.65 | nakayama nori)
今回は入賞として選んで頂きありがとうございます。この写真は沖縄本島で海の風景を撮ろうと車を走らせていると、5~6匹の猫達が海風に吹かれて気持ち良さそうにしていました。兄弟なのか?仲間の猫か?仲良く昼寝。2匹の猫が1匹の猫にそーっと近づいている様子。猫も人も同じ事をやるんですよね! 面白い一枚が撮れました。
「カブトミジンコ」 (No.66 | 今岡 史士)
図書館で「顕微鏡で見るミクロの世界」に出会い、中学校理科室で顕微鏡をのぞいて遊んでいた50年前がよみがえり、当時は買えなかった顕微鏡を2012年秋購入し小さな世界をのぞき楽しんでいます。カブトミジンコは、年間30回くらい通っているため池で偶然出会い、色々照明の工夫をしながら撮影しました。何気なく見るとただの水ですが、顕微鏡で覗くとミクロの世界では、様々の生き物の活気であふれています。
「橋杭岩に昇る天の川」 (No.77 | 川口 勉)
和歌山の串本にある橋杭岩は景勝地として有名ですが、その奇岩が立ち並ぶ海岸から彼方に昇る星々を見ていると、人類がまだ地球上に現れる前の太古の風景がそこにあるように感じました。
「ゆっくりでいいからね」 (No.81 | 糸賀 一典)
親が再三雛を促して、やっと水の中を歩かせた瞬間。一羽が前を歩きながら、時に振り返りながら雛を見守り、一羽が横を歩いて雛を見守り対岸へ歩いて行きました。タンチョウ親子が見せてくれた、雛に真摯な愛情を与えている姿を目の当たりに見れたカメラマン全員が、とても良い表情だったのは、本当に印象的でした。
「幻想の朝」 (No.93 | 小林 光佐)
-25℃、凍て付く程の寒さの中。朝霧と霧氷に包まれるタンチョウの寝床でその瞬間は訪れました。一瞬。霧の中に佇む一羽のタンチョウが姿を現しました。川霧、霧氷、それらをほんのり赤く染める朝日、更には普段感じることのないほどの寒さも相まって、ただでさえ美しいタンチョウが驚くほど幻想的に見えました。
(写真をクリックすると大きいサイズで見ることができます。)
全応募作品も同時に公開しております。
当サイトのフォトコンテストのタブより、是非ご覧ください。
(公開よりしばらくの間は、新着情報からもご覧いただけます)
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。