第12回ナチュラルヒストリーフォトコンテスト結果発表および受賞作品・コメント 2021.01.29
第12回ナチュラルヒストリーフォトコンテストの審査結果を発表します。
以下は審査経過、審査委員長からの講評、受賞作品および受賞者のコメントになります。
審査経過
公益財団法人藤原ナチュラルヒストリー振興財団では、2020年度第12回ナチュラルヒストリーフォトコンテストを行った。今年度のテーマも引き続き「身近な自然史」とし、応募期間は2020年10月1日~11月30日、応募方法はメール添付とした。
募集方法としては、財団HPへの掲載、インターネットのコンテスト情報掲載サイト(登竜門)へ登録した。
本年度のフォトコンテストには総計で114作品の応募があった。新型コロナウィルスの影響を懸念していたところ、募集期間終了近くまで応募件数が少なく心配されたが、結果として昨年度の105件を超える応募となった。
一次審査として、財団役員等が応募作品から5作品を選び、さらに最も良い作品を1つ選んで投票を行った。選ばれた作品をそれぞれ1点とし、最も良い作品はさらに1点を加算する事とした。集計の結果、2得点以上を得た作品を一次審査通過作品とし、23作品が選ばれた。
二次審査は、財団役員等が一次審査通過作品の中から優秀とする3作品を選び、その中で最も良い作品を最優秀とし1つ選び、最優秀を2点、優秀を1点として集計した。その結果、8点を得た「No.5. 奇岩の夜明け」が最優秀作品に、7得点の「No.34. 石鎚山の雲海滝登り」および「No.52. 奇妙な雲」が優秀賞作品に選ばれた。また、2次審査対象作品のうち3得点以上を得た8作品を佳作とした。
一次審査通過作品(*が入賞作品)
No.1 保呂の虫食い岩 / No.2 音もなく朽ちて行く / No.5 奇岩の夜明け * / No.7 ヤコウチュウ * / No.16アメンボの捕食と交尾 * / No.29 けあらしの朝 * / No.30 オオタカの餌渡し / No.31 シルエット * / No.32 朝露 * / No.34 石鎚山の雲海滝登り * / No.38 アゲハ飛行隊 / No.42 手をつなぐ / No.51 螺鈿の湖(らでんのうみ) / No.52 奇妙な雲 * / No.62 緻密な仕上がり〜コザクラインコの羽より〜 / No.65 奇跡の白リス * / No.77 全集中 * / No.82 この山肌の筋は何? / No.86 かくれんぼ / No.92 過去と向き合う / No.99 雲海に輝くライン / No.105 共に生きる * / No.112 見つめる先には
講評
今回は図らずも地学分野に関連した作品が最優秀賞、優秀賞に選ばれた。
従来は生物を主題とした作品が多く選ばれていたが、今回の三点はいずれも雄大な自然を描き出した作品である。新型コロナ渦によりフィールドでの活動が制限されていた影響があるのかも知れない。
最優秀賞の「奇岩の夜明け」は海上の岩礁と背景の銀河の対比が美しく、しかも夜明け前の水平線がアクセントになっている作品である。
優秀賞の2点はいずれも雲を主題とした作品で、それぞれ目を見張る美しい風景の中で表現された力作である。
今年も他の作品においてもレベルが高く、上記3作品以外にも素晴らしい作品が多いため、8作品を佳作として選定した。
【最優秀賞】
「奇岩の夜明け」 (No.5 | 筒井 健作)
伊豆半島南端にある蓑掛岩は、役の行者が飛行用の衰を掛けたという伝説が伝わる奇岩です。役の行者もこの星空を見たかもしれないと思いながら、薄明の空に徐々に溶けていく天の川に夢中でシャッターを切りました。
※ 写真をクリックすると大きいサイズで見る事ができます。優秀賞・佳作も同様です。
【優秀賞】
「石鎚山の雲海滝登り」 (No.34 | 池田 侑穂)
紅葉のピーク真っ只中の石鎚山を深夜から登りはじめて、頂上に朝焼け前に到着しました。この時頂上は風が強く、気温も2度とかなり冷え込んでいました。そして、すごく綺麗な朝日が見れました。その後雲海が強い風に乗って天狗岳を滝登るように舞い上がっていた瞬間を撮影しました。
「奇妙な雲」(No.52 | 北島 宏亮)
この度はこのような賞をいただきありがとうございます。この不思議な雲は吊るし雲といい、天気が崩れる前兆とも言われています。私は何度か撮影したことがありますが、綺麗な形の吊るし雲を撮影することができたのは初めてでとても興奮したのを覚えています。このような不思議な雲が自然に発生することはとても神秘的だと感じました。
【佳作】
「ヤコウチュウ」 (No.7 | 今岡 史士)
尾道の砂浜では、昔は大量のアサリが採れていましたが、今は昔の0.3%に落ち込んでいます。原因は、色々考えられますが、素人ながらエサとなるプランクトンや二枚貝幼生(アサリとは断定はできませんが)の様子を観察しています。観察していて、大量のヤコウチュウに出会い思わず撮影しました。
「アメンボの捕食と交尾」 (No.16 | 上杉 裕昭)
アメンボは度々撮影しているのですが、捕食と交尾を同時にしている場面に遭遇したのは初めてです。アメンボの捕食形態は「待ち」ですから、偶然水面に虫などの餌が落ちてこないと捕食できません。近づくとすぐに逃げるので、ピント合わせが困難でした。
「けあらしの朝」 (No.29 | 笹田 雅代)
寒い晴れた日の朝、上流の大洲盆地で発生する霧が肱川を一気に流れ出す珍しい現象を撮影しました。ゴーっと言う風の音をさせながらゆっくりと行く霧は幻想的で生き物の様です。寒いのも早起きも苦手ですが、この光景を見ると苦手も忘れます。
「シルエット」 (No.31| おちゅん)
テントウ虫が顔のお手入れを念入りにした後、翅を広げたので「飛び立ってしまう」と思い急いで撮ったら、飛んでしまわないように足で葉にしっかりと掴まりブーンブーンと何度も翅を広げては畳んでを繰り返していました。翅のお手入れでしょうか?私は初めて見た光景だったのでとても印象的でした。
「朝露」 (No.32 | 伊藤 京子)
秋の明け方。朝露にまみれたミヤマアカネは、水滴の重みで動けずその場にじっとしています。その姿を初めて見たときは、生きたまま冷凍保存されているかのようで感動しました。やがて日が射し始め朝露がキラキラと輝いてくると、まるで宝石で作られたブローチを見ているかのようでした。秋の冷え込んだ寒い明け方にみられる光景です。その後、日の光が当たり朝露がとれると元気いっぱい飛び回っていました。
「奇跡の白リス」 (No.65 | 平澤 勇斗)
アルビノの個体は1/1000000の確率で生まれてくると考えられており、2020年12月現在でこの種のアルビノは地球上に2匹しか確認されていません。この奇跡のような白いリスを目撃できたこと、そしてその美しく神々しい姿を写真に収めることができたことに喜びを感じました。
「全集中」 (No.77 | 村上 正幸)
ファインダー越しに見える鋭い瞳のシロフクロウ。「森の王者」にふさわしい威圧感でした。シャッターをきったあとも、しばらくお互い視線ははずしませんでした。そばにいた孫が「全集中の気合だ」とポツリとつぶやいた言葉がタイトルになりました。
「共に生きる」 (No.105 | 佐藤 龍平)
アリたちが甘露をせがんで、共生関係にあるアブラムシの周りを動き回る姿はとても可愛らしいです。この瞬間をとらえるのには忍耐が必要でしたが、おかげでアリの世界をじっくり観察できました。こんなご時世だからこそ、改めて身近な生物に注目してみたら、新たな発見に驚かされることが多く、世界が広がった気がします。
(写真をクリックすると大きいサイズで見ることができます。)
全応募作品も同時に公開しております。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。