第13回ナチュラルヒストリーフォトコンテスト結果発表および受賞作品・コメント 2022.02.02
第13回ナチュラルヒストリーフォトコンテストの審査結果を発表します。
以下は審査経過、審査委員長からの講評、受賞作品および受賞者のコメントになります。
審査経過
公益財団法人藤原ナチュラルヒストリー振興財団では、2021年度第13回ナチュラルヒストリーフォトコンテストを行った。今年度のテーマも引き続き「身近な自然史」とし、応募期間は2021年10月1日~11月30日、応募方法はメール添付とした。
募集方法としては、財団HPへの掲載、インターネットのコンテスト情報掲載サイト(登竜門)へ登録した。
本年度のフォトコンテストには総計で99作品の応募があった。新型コロナウィルスの影響からか、昨年度と比べ応募数は少なくなった。
一次審査として、財団役員等が応募作品から5作品を選び、さらに最も良い作品を1つ選んで投票を行った。選ばれた作品をそれぞれ1点とし、最も良い作品はさらに1点を加算する事とした。集計の結果、3得点以上を得た作品を一次審査通過作品とし、17作品が選ばれた。
二次審査は、財団役員等が一次審査通過作品の中から優秀とする3作品を選び、その中で最も良い作品を最優秀とし1つ選び、最優秀を2点、優秀を1点として集計した。その結果、10点を得た「No.53. 晩秋の装い」が最優秀作品に、6得点の「No.10. 渡りの途中」および「No.25. 秋空に向かって」が優秀賞作品に選ばれた。また、2次審査対象作品のうち3得点以上を得た9作品を佳作とした。
一次審査通過作品(*が入賞作品)
「10. 渡りの途中」(優秀)、「13. ミジンコ」*、「18.水辺の仲間たち」*、「20. 森の宝石 (絶滅危惧種 紅花ヤマシャクヤクの種子)」*、「23.旅立ちの時」*、「25.秋空に向かって」(優秀)、「36.乗り越えて」*、「50.満開桜に雪化粧」、「51.ヨセミテの夜空」、「53. 晩秋の装い」(最優秀)、「57. ドルフィン・ワールド」、「59. ひと休み」*、「64. 美食家」、「72. 髭に秘められたKiller」、「75. 夕暮れの湖底」*、「86. 我が子のために-ヒメツチスガリの帰巣-」*、「97. 束縛」*
講評
昨年は最優秀賞、優秀賞には地学に関連した作品が選ばれたが、本年は動物を主題にした作品が選定された。偶然なのか3作品ともに背景の植物との対比が美しい作品であった。
最優秀賞の「晩秋の装い」は露をまとったヤマトシジミがキンエノコロに留まっているもので、全体に散りばめられた大粒の水滴が美しい作品である。
優秀賞の「渡りの途中」はヤドリギの実を啄むヒレンジャク、「秋空に向かって」はフジバカマと空を背景としたアサギマダラを捉えた躍動感のある作品である。
今年もレベルが高い作品が多く見られ、上記3作品以外にも素晴らしい9作品を佳作として選定した。(注:本文中の生物名の同定は間違っているかも知れません)
【最優秀賞】
「晩秋の装い」 (No.53 | 小田 幸司)
晩秋の早朝には朝露にまみれた昆虫を観察することができます。放射冷却により気温が最低となる時間帯には地表近くの小昆虫を宝石の中に閉じ込めるかのように水滴が大きく成長します。その中でもヤマトシジミは陽が射し始め体温が戻ってくると口吻を伸ばし自らの水滴で水分を補給し始めます。その姿は生物の生きる力を一番感じさせる瞬間でもあります。
※ 写真をクリックすると大きいサイズで見る事ができます。優秀賞・佳作も同様です。
【優秀賞】
「渡りの途中」 (No.10 | 梅津 潤)
ほぼ毎年春先になると、森林公園にあるヤドリギに、渡り途中のヒレンジャクが、実をついばみに何度か立ち寄って行きます。このような姿で、古くから自然の中で繰り返されている、季節の巡りを身近に感じることができます。
「秋空に向かって」(No.25 | 伊藤 京子)
アサギマダラは春から初夏にかけて本州等の高原地帯に移動し繁殖地とします。秋になると気温の低下と共に適温の地を求めて南下します。ここ京都の水尾では近年発見された原種藤袴が保存のため栽培されており、秋の南下の時期には、その藤袴畑を旅の途中の休息地とし古来からの甘い香りに誘われ飛来します。ピーク時に舞う光景はまるでおとぎの国の花畑ようになります。
【佳作】
「ミジンコ」 (No.13 | 今岡 史士)
夏に公民館での子ども顕微鏡教室のためプランクトンを採集し、飼っていましたが、新型コロナの影響で中止になりそのまま保管していました。その中の、大きく観察しやすいオカメミジンコを、暗視野照明で撮影してみました。おとなしくミジンコらしいポーズでいてくれました。
「水辺の仲間たち」 (No.18 | 有岡 亨)
定年退職後散歩中、今まで見たことのない青い鳥が目の前を横切り、その美しさを残して飛び去った。ほんの数秒間の出会いが、カワセミと分かり野鳥撮影へ始まりで、80歳の今も続行中。今回、川辺で穏やかに佇んでいる野鳥たちの、一風景の作品を選んで頂き「もっと良い作品を」をの思いが日々強まっている。
「森の宝石(絶滅危惧種 紅花ヤマシャクヤクの種子)」 (No.20 | 小和泉 春男)
赤くて青い「紅花山芍薬」の種子、京都府の絶滅危惧種に指定され、群生地の南丹市美山町で保護されている貴重な植物です。同地の杉林には9千本ほどが群生し、秋には花の後にできる色鮮やかな赤い果肉と青い種子を見ることができます。写真は果肉上で休憩する蛙を配し撮影しました。
「旅立ちの時」 (No.23 | 木下 滋)
アサギマダラは旅をする蝶として知られています。和歌山県でマーキングされた蝶が、台湾で確認されたのもいるとのこと。なぜ、渡りをするのか詳しいことは解明されていないそうです。秋、フジバカマの蜜を求めてやってくるチョウには翅が傷んでいるのも結構見られ、無事目的地に飛んでいけるよう応援したくなります。
「乗り越えて」 (No.36 | 中村 靖)
このたびは佳作に選出くださり、誠にありがとうございます。この写真は屋久島を訪れた際に撮影したものです。屋久杉を見に森に入った際に、倒れた木を乗り越えて力強く空に向かい伸びる木を見つけ、その大きさから、時間の流れと自然の力に感動したのを覚えています。自然には私たちの想像を超える力があり尊敬の念を抱くとともに、改めて自然を守り続ける意識を強く持たねばと思っています。
「ひと休み」 (No.59 | 山本 知佳)
私が家の庭を歩いている時、蛙が横からひょっこりと顔を出しました。追いかけると、木の下でピタリと止まって、静かに口を膨らませたり、呼吸をととのえたりしていました。カエルの気持ちを感じとりたかったので、カエルの目線と同じ高さから撮りました。
「夕暮れの湖底」 (No.75 | 宮田 敏幸)
被写体になった鏡野町上齋原恩原高原は四季折々を訪ねる大好きな場所。最近はドローンにて撮影することで、角度の目新しい作品を目指しております。晩秋の恩原湖は水を抜くことで湖底が現れます。この年は今まで以上に水が抜かれ湖底が露わになり夕暮れの光の効果もあって、いつもとは異なる風景を見ることができました。この年の記憶に残る一枚になりました。
「我が子のために-ヒメツチスガリの帰巣-」 (No.86 | 佐藤 龍平)
これから生まれる我が子のために、親蜂が獲物を捕らえて帰ってきました。このあとも、何度も何度も狩りに出かけていました。でも、子蜂が卵から孵る頃にはもう親はいなくなっているはずです。子どものためにせっせとはたらく親蜂を撮影していたら、この姿を子蜂にも見せてあげたくなりました。
「束縛」 (No.97 | 池田 大介)
ある夏の日の朝、家庭菜園のキュウリを見に行った際、「どうしてこうなった」と思いながら撮影した1枚です。共感していただいたようで嬉しいです。これまでの人生で、セミの抜け殻は嫌というほど見てきましたが、これほどインパクトのある姿は初めてでした。
(写真は、クリックすると大きいサイズで見ることができます)
全応募作品も公開済みです。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。