第12回高校生ポスター研究発表報告 2022.12.22
2022年11月13日(日)に、第12回高校生ポスター研究発表を開催しました。本年は昨年に続きオンラインで開催し、遠方からの参加も含め14校のポスター発表が行われました。
参加校はZOOMで参加し、財団より割り当てられた2つのブレイクアウトルームで、それぞれ10分の持ち時間のうち、3分間で説明、残りを質疑応答として発表を行いました。審査員も2班に分かれ、順次2つのブレイクアウトルームを訪れ、ポスターを見ながら説明を受けた後、口頭やチャットで質問をしました。また、参加者もブレイクアウトルーム内の他校の発表を見学し質問等ができるようにしました。
審査は、8人の審査員が「自然史(ナチュラルヒストリー)という視点」に留意しながら5段階評価を行いました。
その結果、最優秀賞には、東京都立科学技術高等学校の「ヒキガエルの色彩パターンを用いた生態調査」が、優秀賞には、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校の「形態観察によるカマキリのカマの進化の考察」と、愛媛県立西条高等学校の「輝安鉱の人工合成~中性による水熱合成法~」の2件が選ばれました。
発表者詳細とコメント・ポスター研究発表のレポートは下記の記載のとおりです。
これら3件以外の発表にも優れたものが多く、今年度は僅差での入賞決定となり今後の発展を期待しています。
【レポート】村上 哲明 (東京都立大学教授・財団評議員)
今回のポスター発表に応募してくださった研究は、動物、植物、さらには鉱物や気象に関するものまで、自然史(ナチュラルヒストリー)の多様な分野のものが含まれていました。さらに、それぞれが自分たちの興味を持った対象を粘り強く調べて得られた結果を発表されていました。
その中でも、受賞されたヒキガエルの色彩パターンを用いた生態調査は、まさに労をいとわずに300個体近くの腹部の模様を比較して個体識別をしたもので、その頑張りは高く評価できるものでした。
輝安鉱の人工合成の研究は、地元の鉱山に形成されていた鉱物に着目し、さらに先輩から代々引き継ぐ形で試行錯誤を繰り返して、その形成機構や条件を解明しようとしてきた姿勢が素晴らしいです。
また、自分が好きな生き物であるカマキリの鎌の形態を詳細に観察し、それを系統的に近縁で鎌を持たないゴキブリの前足や、系統的に離れているが類似した鎌をもつ昆虫とも比較した研究は、自分の興味のある対象をじっくり観察してみるというナチュラルヒストリーの基本を忠実に実行したものでした。
一方で、今回は残念ながら賞から漏れてしまった発表にも、甲乙つけがたい素晴らしいポスター発表がたくさんありました。がっかりすることなく、それぞれの研究を継続して発展させていっていただければ幸いです。
ナチュラルヒストリーの研究対象は実に幅広く、例えば日本産の個々の野生生物種についてわかっていることは、まだほんのわずかです。自分の興味のある生物の生態や関心のある特徴について、じっくり観察をしてみれば、まだ誰も知らなかった新発見が必ずあるはずです。
DNA解析など、高校生の皆さんでも比較的容易に実施できるようになった最先端の解析手法もあるので、可能な状況であれば積極的に先端技術を活用するのは良いことですが、そのような場合でも、まずは自分の研究対象をじっくり観察するところから始めていただきたいと私は思います。
それが独創的な研究に直結していきますし、何より楽しく研究を続けられることになりますから。
ナチュラルヒストリーの研究は、自分が真に興味をもてる対象について、楽しんでやることが何よりも重要です。本当に楽しんでやれれば、労を惜しまずに試行錯誤を繰り返す、長期間にわたって調査研究を続けるなども苦も無くできて、結局、独自性の高い研究成果が得られることにつながっていくからです。
是非、楽しんでナチュラルヒストリーの研究を続けて下さい。
【最優秀賞】
ヒキガエルの色彩パターンを用いた生態調査
- 東京都立科学技術高等学校
- 城 陽太・錦織 智崇・細井 托人
最優秀賞をいただきありがとうございます。初めてのオンライン発表で、緊張もしていて、まさか受賞できると思っていなかったのでとても嬉しいです。ヒキガエルの捕獲や画像の照合、データ整理はとても大変だったので、努力が実って良かったです。今後も研究は継続していくので、内容を充実させていきたいです。
【優秀賞】
形態観察によるカマキリのカマの進化の考察
- 横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校
- 安藤 嶺
この度は、優秀賞にご選出いただきありがとうございます。今回の研究では、小さい頃からずっと好きだったカマキリのカマに着目し、その進化についての考察を行いました。たくさんのアドバイスをしてくださった先生方に感謝いたします。また、今後も丁寧に観察する姿勢を忘れずにしていきたいと思います。
輝安鉱の人工合成~中性による水熱合成法~
- 愛媛県立西条高等学校
- 桑村 翔・佐々木 飛和・細川 唯笑・寺田 莉々子・伊藤 瞳
- 藤本 橙紀・渡辺 陽菜・稲見 緋夏・宇佐美 孝将
- 西村 織羽・藤田 結衣
この度は優秀賞を受賞することができ、大変嬉しく思います。実験自体は反応時間と降温時間、分離生成などを行い、長期スパンになるため、これまでの努力が実ったようで良かったです。これからも引き続き市ノ川の産状と比較しながら輝安鉱巨大化の謎を解明していきたいと思います。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。