公益財団法人 藤原ナチュラルヒストリー振興財団 | Fujiwara Natural History Foundation

2024.03.10 フォトコンテスト

第15回フォトコンテスト・全作品公開

2024.03.08 助成案内

第31回学術研究助成 研究成果報告書・決算書 (2022年度)

2024.03.05 フォトコンテスト

第15回フォトコンテスト結果発表および受賞作品・コメント

2024.02.01 助成案内

第32回学術研究助成 実行予算書 (2023年度)

2024.01.31 フォトコンテスト

第10回中学生・高校生フォトコンテスト(2023)・全作品公開

2023.12.25 フォトコンテスト

第10回中学生・高校生フォトコンテスト結果発表および受賞作品・コメント

2023.12.22 高校生ポスター研究発表

第13回高校生ポスター研究発表報告

2023.12.22 シンポジウム

九州シンポジウム「天変地異の時代〜火山列島に生きる〜」  レポート

2023.11.24 シンポジウム

第15回シンポジウム「味の自然史」(ハイブリッド)感想 

2023.09.19 フォトコンテスト

第15回 フォトコンテスト開催【10月1日募集開始】

2023.08.07 助成案内

2021年度高等学校助成(旧備品助成)結果報告

2023.08.01 シンポジウム

九州シンポジウム「天変地異の時代〜火山列島に生きる〜」(ハイブリッド)開催

第13回高校生ポスター研究発表報告 2023.12.22

2023年11月19日(日)に、第13回高校生ポスター研究発表を開催しました。本年もオンラインで開催し、北は秋田から南は愛媛と、各地から14校が参加し、13校のポスター発表が行われました。

参加校はZoomで参加し、説明3分、質疑応答3分の計6分で発表が行われました。全参加校の発表終了後、参加校はそれぞれ財団より割り当てられた4つのブレイクアウトルームに分かれ、審査員が各ブレイクアウトルームを回り、質疑応答がなされました。また、参加者間でもブレイクアウトルーム内でチャット質問が盛んに行われました。なお、休憩時間になっても他校との交流を望む声があったため、希望者は引き続き意見交換を行いました。

審査は、10人の審査員が「自然史(ナチュラルヒストリー)という視点」に留意しながら5段階評価を行いました。

その結果、最優秀賞には、愛媛県立松山西中等教育学校の「夕暮れに現れる謎の雲に迫る ~ヒートアイランド強度とGPS 大気遅延量を駆使して~」が、優秀賞には、東京都立科学技術高等学校の「都市公園における鳥類相と環境利用」と、浦和実業学園高等学校の「ガクアジサイの装飾花が長期間にわたり反り返って残る理由」の2件が選ばれました。

発表者詳細とコメント・ポスター研究発表のレポートは下記の記載のとおりです。

これら3件以外の発表にも優れたものが多く、今年度も僅差での入賞決定となり今後の発展を期待しています。

【レポート 1】上田 恵介 (財団理事)

ここ数年、コロナでポスター発表もすっかりオンラインになってしまって、対面形式が懐かしいという人もいるかもしれないが、オンラインにはそれなりの良さがある。ポスターを当日、初めて見て、審査するというのは、審査の側にとっても大変だし、発表者の側にとってもきちんと理解してもらえただろうかという不安が付きまとう。ポスターのプレゼン画面を事前に送付しておいて、審査員はそれを見て、発表当日までにじっくりと審査ができるという点は、とても良いと思う。また発表者側も昔のように大きなポスターを印刷して会場まで持ち運ぶという手間もなくなった。昨年も全国から応募があったが、今年も秋田県から岐阜県、兵庫県まで、全国から14校の参加があった。これはとてもいいことだと思うし、応募は今後、まだまだ増えていくと思う。

さて、今回のポスターも色々面白いものがあって、審査者側としてもとても楽しませてもらった。これは私だけでなく他の審査委員の先生方も同じだろう。

科学の原点はここにあると思う。かつてガチョウのヒナの行動にインプリンティング(刷り込み)という動物行動の基本的な学習様式を発見した動物行動学者のローレンツは、「科学の発見とは、それまでみんなが見ていて、誰も疑問に思っていないことの中に、新しい意味を発見することなのだ」と言っている。

大切なことは、さまざまな自然界の現象を自分の目で見て、自分の頭で考えること。これに尽きる。その意味で、松山西中等学校チームの"謎の現象X"の発見と、その解明は高校生らしい、若い科学的センスの発露だと思う。

優秀賞の尼崎小田高校の手動PCRもとても良い研究だと思う。お金がなくてPCR装置が買えない。大学でも貧乏研究室では(さすがにPCRくらいは買えるが)よくあることである。昨今、何でも高度化して、ブラックボックス化して、やっている本人も中で何が行われているかわからないというのは科学を探究しようとする精神からの乖離である。DNAが複製され、増幅されるプロセスを自分の目で見て確かめる(実際は見えないが)精神は科学者にとって、最も大切なことである。


【レポート 2】宇田川 真由 (財団評議員)

今年度も、全国の高校からナチュラルヒストリーに関する多彩な分野の研究発表の応募をいただきました。動物、植物、菌類、気象と幅広い分野の発表がなされ、どの研究も粘り強く進めてきた力作揃いでした。DNAを扱った研究も複数あり、自然史を理解する上で分子生物学がより身近なものになってきていることが伺えました。

最優秀賞を受賞された「夕暮れに現れる謎の雲に迫る」では、部員の皆さんで天体観測をしているときに急に現れて消えていった雲について疑問をもち、「現象X」と名付けて、自分達で設置したデータロガーから得た気温データに加えて、気象庁や国土地理院が公開しているさまざまな気象データを駆使して、現象Xが起こるメカニズムや生じる条件を科学的に明らかにしました。気候変動との関連にも触れ、環境指標の1つとなる可能性を指摘しており、新奇性においても大変優れていたと言えます。ポスターも、数式だけでなく図や短い言葉で現象を説明したことにより、とても見やすく仕上げられていました。

ガクアジサイの装飾花の役割について調べた研究では、がくが花が咲き終わった後も長期間にわたって残るのはなぜか、といった素朴な疑問から、繁殖戦略において有利に機能している可能性を、モデルを作成して実験をすることで見事に明らかにしました。

都市公園における鳥類を調べた研究では、1年間にわたって鳥類の継続観察と記録を地道に行い、夏鳥を中心にこれまで確認されていなかった種が多数飛来していることを新たに突き止めました。

今回残念ながら賞から漏れてしまった研究も、甲乙つけ難いものでした。いずれの研究も、雲や花、鳥などといった、普段何気なく目にしている自然に目を向けて、疑問を持ち、科学的に見つめて新たな知見を得るという、ナチュラルヒストリー研究の基本とも言うべき姿勢を体現した素晴らしいものでした。

また、チームで取り組んだ研究や先輩たちから引き継いだ研究も多く含まれました。将来の研究者である高校生の皆さんが、仲間や先輩たちと一緒に自然に向き合ってきた経験そのものが、自然史に関わるアカデミアにとって貴重な財産であると言えます。ぜひ、今後も研究を続けていってほしいです。

最後に、非常に良くできた数々の研究発表ポスターから、生徒と一緒に歩まれてきた指導教員の先生方のご苦労も垣間見えました。大学とは異なり、高校といった限られた時間や環境の中で生徒と一緒に研究を進めていく苦労は、並大抵のものではありません。労いの拍手をお送りしたいと思います。


【最優秀賞】

夕暮れに現れる謎の雲に迫る  ~ヒートアイランド強度とGPS 大気遅延量を駆使して~

愛媛県立松山西中等教育学校
若山 唯織・大木 修平・丹 貴虎

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最優秀賞をいただき、とても驚きました。昨年の発表会でいただいたアドバイスを生かし、多くのデータを集め分析し、現象Xの発生過程について1つのアイデアを出すことができました。地道な努力が実を結び、大変でしたがとても充実した研究となりました。まだまだ未解明な部分があるため継続して研究していきたいです。

【優秀賞】

ガクアジサイの装飾花が長期間にわたり反り返って残る理由 

浦和実業学園高等学校
宮本 航聖

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本研究は祖母の家の庭先で得た素朴な疑問から始まりました。帰省した際に結果を祖母へ報告します。将来、大学レベルの高度な研究に携わるとしても「小さな疑問」を疎かにせず、日進月歩、その都度見つけた「謎」と向き合う所存です。

都市公園における鳥類相と環境利用

東京都立 科学技術高等学校
佐藤 暖哲・鞠子 禅

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この度は、名誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。毎回、双眼鏡やカメラ、メモ帳を携えて鳥の種の識別と個体数の調査に向かい、1年半がかりの努力により今回の成果を達成できました。このような調査では長期的なデータが重要なので、今後も継続的に調査を行っていき、新たな発見を目指して精進してまいります。

公益財団法人 藤原ナチュラルヒストリー振興財団

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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。