第5回藤原ナチュラルヒストリー財団フォトコンテスト・受賞者のコメント 2014.03.23
今回で第5回となる藤原ナチュラルヒストリー振興財団フォトコンテストは、2013年11月30日の締め切りまでに、31点の応募をいただきました。フォトコンテストも5回目となって定着してきたようで、応募された各作品のレベルは安定して高くなってきました。 その一方で、対象生物が持つ造形や色の美しさに頼ってしまっているような作品も多く見られました。本フォトコンテストは自然の美しさや楽しさ、厳しさといった自然史のもつ特性を描いた作品を評価するという趣旨なので、次回はそれに沿った作品が数多く集まるのを期待しています。また、生物を対象としたものだけでなく、地学的(地質学的や天文学的)な作品も期待しております。
厳正な審査の結果、本年度は以下の様に最優秀賞1点、優秀賞2点、佳作4点を決定しました。
最優秀賞
「クラゲに守られて」(No.15|谷口 常雄)
水中でクラゲに遭遇するとその幻想的な姿に地球の生命体の不思議さを実感します。クラゲの命の鼓動の中に共生する事で命を守り続けるカニ。レンズを向けるとクラゲの体の中から私を静観しているカニの目は切なく臆病ではあるが、しかしその眼光はしたたかな生命力にあふれていて圧倒された。
優秀賞
「闇夜の氷像」(No.02|丸山 宗利)
ベトナムで観察したクロハタザオツノゼミHypsauchenia hardwickiの羽化である。羽化は深夜から明け方に行われる。幼虫の背中が割れ、10分ほどかけて抜けだし、それからさらに30分ほどで角が伸びきる。その瞬間の純白、その美しさは闇夜に輝く氷の像のようだった。
「アキグミの葉」(No.21|中川 雅三)
小学生のときに小さな顕微鏡を買ってもらいました。
カラフルに染められた「グミのりん毛」というプレパラートがお気に入りでした。生きている姿はもっと美しかったのですね。
どのような適応がこの姿を生んだのでしょうか。
佳作
「ため池の向こう側」(No.05|小西 繭)
秋の始まりを告げる静かな昼下がり、蒼空を映した水面の向こうには誰も知らない動的な世界が広がっています。営々と受け継がれる山里のため池は絶滅危惧種シナイモツゴに残された最後の砦。信州遊谷にて。
「ツシマヒメボタルの夜」(No.26|上原 浩一)
ヒメボタルのなかまは、ゲンジボタルやヘイケボタルと違って幼虫も陸上で生活し、水辺ではなく森の中で見られます。ひかりかたもフラッシュ光の点滅が特徴です。写真は6月初旬に対馬、太祝詞神社の森で見られたツシマヒメボタルLuciola tsushimaです。2分ほどの露出で夜の森で無数のホタルが木立を縫うように飛翔する軌跡をとらえました。
「ピグミーシーホース」(No.16|谷口 たけ子)
この被写体は海中のウミウチワの色に擬態し溶け込んで生きています。
実に極小サイズなのでマクロレンズで覗くと顔の表情が滑稽で楽しいです。
カメラを向けると危険を察知してウミウチワの枝の間に身を隠しますが、この時は丁度額縁にはまった絵画の様に構図を決めてくれました。
「仲間?敵?」(No.30|中川 清美)
七月、東京西郊の自宅庭先の桑の葉上の出来事でした。白いカメムシ(?)が、黒とにらめっこです。黒は微動だにせず、根負けした白が、その後方向を変えて退却。黒は脱皮の抜け殻か、はたまた色違いのトモガラ(輩)か。小さなアクシデントを目撃しました。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。