第15回高校生ポスター研究発表報告 2025.12.05
2025年11月9日(日)に、第15回高校生ポスター研究発表を6年ぶりに対面で開催しました。会場は、慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎、広々としたホワイエに11校12テーマのポスターが並びました。当日は小雨が降り肌寒い日でしたが、生徒の皆さんの熱心な発表と審査員との活発なやりとりで、会場はそれを感じさせない熱気に包まれていました。
表彰式の前には当財団理事で慶應大学医学部 准教授 鈴木忠先生から「オニクマムシ物語」の特別講演がありました。
総評および入賞者コメント、参加校一覧は下記のとおりです。
【総評】上田 恵介 (財団理事)
今年の高校生ポスター研究発表は、11月9日、慶應義塾大学日吉キャンパス・来往舎にて久しぶりの対面開催となり、11校から12件の発表がありました。審査は9人の審査員が「自然史(ナチュラルヒストリー)という視点」に留意して5段階評価を行い総合点で最優秀賞(1件)、優秀賞(2件)を決定しました。
今回の最優秀賞には、茨城県立土浦第二高等学校1年内山旬人君の「本州産ツノトンボ亜科3種の基礎情報および識別について」が、優秀賞には、安田学園高等学校生物クラブ2年國谷理久君と西野大翔君の「ミツバチの栄養交換を誘発する触角ムーブメントの解析」と、西宮市立西宮高等学校2年の有末凉子さんの「植物ホルモンがミドリムシの生育に与える影響についてThe Effect of Plant Hormones on the Growth of Euglena」の2件が選ばれました。
最優秀賞の内山君のツノトンボ亜科3種の研究は、これまで日本ではほとんど情報のなかった3種のツノトンボの産卵様式と幼虫の形態、そしてオオツノトンボ成虫の雌雄識別についての基本情報の解明につながるもので、地味な研究ではありますが、自然史研究らしさを備えたものであったことが高い評価につながりました。優秀賞の國谷・西野両君によるミツバチの触角ムーブメントの研究は、セイヨウミツバチのワーカーが栄養交換を行う行動学的メカニズムを解明したもので、緻密な観察と解析に基づいたレベルの高い研究でした。もう一つの優秀賞の有末さんによる植物ホルモンがミドリムシの生育に与える影響もよく準備された実験で良い結果が得られています。
これら以外の発表にも優れたものが多く、今年度も僅差での入賞決定となりました。入賞しなかったみなさんの発表も面白いものが多くありました。私たち審査員にとって、皆さん方の発表から、新しい発見につながる科学の芽を見出すのがいつも楽しみです。柔軟で新しい発想はやっぱり若い人たちから出てくるものだなと思います。自然史研究というものは野外に出て、ありのままの自然を観察し、そこから研究の新しい発想を得て、考察を深めていくプロセスそのものです。高校生の皆さんが自然を楽しみ見つめることから、より深い自然史研究への道が開かれることを期待しています。
久しぶりの対面開催で、審査員にとっても、高校生のみなさんとじっくり議論ができて充実した時間を過ごせました。がんばって研究に取り組んだ高校生のみなさん、指導にあたられた先生方には、財団関係者一同心より感謝申し上げます。来年度も皆さんの参加をお待ちしています。
【最優秀賞】
本州産ツノトンボ亜科3種の基礎情報および識別について
- 茨城県立土浦第二高等学校
- 内山 旬人

本研究を高く評価くださり、大変光栄です。発表では専門の先生方からたくさんのご質問やご感想などをいただけて話が尽きず、とても楽しかったです。これからもツノトンボたちのことをさらによく見て、知って、検証して、また新しい発見をご報告していけたらと思います。本当にどうもありがとうございました。
【優秀賞】
ミツバチの栄養交換を誘発する触⾓ムーブメントの解析
- 安田学園高等学院
- 國谷 理久・西野 大翔

私たちは蜂が口移しで蜜を受け渡す社会行動に触角の動きが関わっていることを発見しました。実験前の空腹の蜂が死んでしまったり、AIが触角の動きを追跡しきれなかったり、困難の連続でした。しかし、多くの方々の助言で助けられ、このような素晴らしい賞を頂くことができました。財団の皆様に感謝申し上げます。
植物ホルモンがミドリムシの生育に与える影響について The Effect of Plant Hormones on the Growth of Euglena
- 西宮市立西宮高等学校
- 有末 凉子

高校に入学してから、植物ホルモンとミドリムシの関係について研究を行ってきました。今後は本大会でいただいたアドバイスをもとにミドリムシの種としての分類にも理解を深めつつ、研究内容を発展させたいと考えます。この度は貴重なご機会をいただき、ありがとうございました。
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2024年3月までに、学術研究助成883件、高等学校への助成127件を実施しました。

