生物の殻の中に保存された窒素の同位体組成から栄養源を復元する | 2008年11月18日
著者: 柏山 祐一郎 (海洋研究開発機構・地球内部変動研究センター)
この研究は、2004年度に当財団の第12回学術研究助成を受け開始されました(申請者は当時博士課程1年)。博士研究のテーマではなかったのですが、予想以上におもしろいデータが得られ、助成を受けた一年で、軟体動物の殻の窒素同位体組成から食性に関する復元をするという、全く新しい研究手法を提示できました。その後、本業の博士研究に時間をとられ(?)なかなか進展をみませんでしたが、最近になり、アミノ酸の化合物レベルでの窒素同位体分析という新しい手法を取り入れることで、新たな展開が開けつつあります。
[全文を読む]野生植物の交雑現象とその進化生物学的意義−メギ科植物イカリソウ属の場合− | 2008年11月17日
著者: 牧 雅之 (東北大学大学院生命科学研究科)
植物は動物と違って動けないので、他の個体との遺伝子のやりとり(花粉が雌しべに運ばれて受精が起こる)が受動的に行われるのが一般的です。そのため、類縁関係が近い種がそばに生育していると偶発的に一方の種から他方の種へ花粉が運ばれて、異なる種間で交配が起きる場合があります。このような現象を種間交雑現象といいますが、植物では広くみられ、古くから生物学者の関心を惹いてきました。
[全文を読む]トンボの進化をさぐる-オセアニアにおける進化の解析- | 2008年8月 8日
著者: 苅部 治紀 (神奈川県立生命の星・地球博物館)
日本人には非常になじみ深い昆虫で、子供たちには友達のような存在の(だった?)トンボですが、実は世界的にはさまざまな扱いを受けています。欧米では、なぜか「トンボは刺す」という迷信が信じられていたり、不吉な虫として扱う地域があったりします。トンボは、昆虫の中でも原始的なグループとして知られています。現在、5千数百種に名前がつけられていますが、まだまだ世界中で新種の発見が続いており、最終的には6千種後半になるのではないかと考えられています。
[全文を読む]太陽系誕生史に迫る | 2008年8月 8日
著者: 橘 省吾 (東京大学大学院理学系研究科・地球惑星科学専攻)
"自然"という言葉から、野山、川や海、澄んだ空、そこに暮らす生物たちを連想される方も多いだろう。その身近な環境を少し遠くから眺めてみよう。宇宙ステーションから眺めてみると、それは地球の一部であることがわかる。もう少し遠くから眺めてみよう。現在,地球から150億km離れた場所を飛行している惑星探査機ボイジャー1号(地球から最も遠くにある人工物)から眺めると、それは太陽系の一部である(図1)。身近な自然の歴史も、地球や太陽系、宇宙の歴史の一部といえる。ここでは、太陽系という大きな自然の歴史について、最新の科学の成果を交えて紹介したい。
[全文を読む]シマオオタニワタリ(シダ植物)に含まれる多数の異なる生物学的種 | 2008年8月 5日
著者: 村上 哲明 (首都大学東京・大学院理工学研究科生命科学専攻(牧野標本館))
はじめに
シマオオタニワタリ(Asplenium nidus L.)は熱帯を代表するシダ植物の1つである(写真1)。この種は分類学の祖といわれているリンネによって記載され、その存在はずっと昔から知られていた。この種は、西はアフリカやマダガスカルから、東南アジア、東アジア(日本も含む)、オセアニア、そして東はハワイにまで広く分布していると考えられてきた。私の研究室では、このシマオオタニワタリを材料にして光合成に関係した遺伝子の塩基配列解析と人工的な掛け合わせ実験(人工交配実験)を行うことによって、この種に多数の互いに交雑できない群、すなわち複数の異なる生物学的種が含まれていることを明らかにしてきた。
[全文を読む]東京都目黒区上目黒1丁目26番1号
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当財団は、ナチュラルヒストリーの研究の振興に寄与することを目的に、1980年に設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。財団の基金は故藤原基男氏が遺贈された浄財に基づいています。氏は生前、活発に企業活動を営みながら、自然界における生物の営みにも多大の関心をもち続け、ナチュラルヒストリーに関する学術研究の振興を通じて社会に貢献することを期待されました。設立以後の本財団は、一貫して、高等学校における実験を通じての学習を支援し、また、ナチュラルヒストリーの学術研究に助成を続けてきました。2019年3月までに、学術研究助成773件、高等学校への助成95件を実施しました。